危機の経済 (識者は語る) 桜美林大学教授 藤田 実さん (上) 揺らぐ「地球規模化」

新型 コロナウイルスの感染拡大は新自由主義的グローバリゼーション (地球規模化)の弊害をあぶり出しました。世界のグローバル企業が多国籍に張り巡らしてきた生産のグローバリゼーションが根底から揺さぶられています。
日本や韓国、欧米などのグローバル企業は生産コストの削減と現地生産―現地消費を目的に海外生産を強めてきました。とくに日本は、素材・装置・一部部品を国内で生産し、それを中国や東南アジアなどに輸出し、部品を生産したり、完成品を生産したりしています。生産した部品や完成品は現地で販売したり、日本に逆輸入したりします。
生産活動休止
このようにグローバル企業は多国籍の企業内・企業間ネットワークを形成し、生産・販売活動を行っています。そのため生産ネットワークのどこかで生産が中断すれば、生産活動全体が休止することになります。新型コロナの感染拡大で中国での生産活動がストップし、日本でも衣料品や雑貨、マスクなどの品切れやエレクトロニクス製品・自動車の生産中断が連鎖的に生じたのは、こうした生産ネットワークの中断によるものです。

こうした生産ネットワークは、国内生産が高コストであるとして海外展開を積極的に進めてきたグローバル企業の経営戦略によって形成されたものです。同時に、グローバル大企業の海外展開はアベノミクス成長戦略におけるグローバリゼーションの推進政策によって加速されています。
アベノミクスの成長戦略の一つは新自由主義的グローバリゼーションの推進です。
安倍政権は、国内でも海外でも稼ぐことを目指していました。国内では周知のように、「世界で一番企業が活動 しやすい国づくり」を掲げ、国家戦略特区の策定や高度プロフェッショナル制度の導入など国際競争力強化のための規制緩和政策を進めてきました。
国外では、環太平洋連携協定(TPP)など経済連携の推進、クールジャパンなど海外市場獲得のための戦略的取り組み、インバウンドの推進など対内直接投資の拡大、企業の海外展開促進、とくに中小企業の海外展開を促進する政策を掲げていました。中小企業の海外展開では、海外展開支援の広がりと深化を図る政府系金融機関のノウハウを拡大し、今後5年間で新たに1万社の海外展開を実現するとしていました。
企業収益拡大
このように安倍政権は企業主導での新自由主義的グローバリゼーションの拡大を目指すことで、企業収益の拡大を目指してきました。その結果、企業収益は拡大しましたが、その収益は海外企業のM&A(合併・買収)に向けられたり、海外生産の拡大などに向けられてきました。またインバウンド消費需要の促進として、海外観光客の増大に政府も地域も力を入れてきました。
企業活動を支援する一方で、国民生活の改善や社会保障の充実が進まないうちに、今回のコロナショックに直面 してしまいました。コロナショックで海外との生産ネットワークが切断されるとともに、インバウンド需要も急激に減少し、日本経済は高度成長期以来最大といってもよい経済危機を迎えています。とくに内部留保などを十分に持たない中小企業や業者などは、廃業の危機に陥っています。中小企業や業者を守る、早急な直接支援が必要です。 (つづく)
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