人権意識 危うい日本 国連人権理が218項目の勧告 4年前にも類似の指摘 政府は猛反発
原発自主避難 支援訴え
加盟各国の人権状況を審査する国連人権理事会は今月、日本に対し、三百項目超の勧告を行った。中でも、福島原発事故の被災者への日本政府の対応をドイツなど複数の国が批判し、自主避難者への支援の継続などを求めた点が注目される。ほかにも沖縄、朝鮮学校、ヘイトスピーチなど、勧告は多岐にわたる。そこから透けて見えるのは、日本の人権状況の危うさだ。審査に参加した人権団体などは、日本政府が勧告を受け入れるよう強く求めている。(大村歩、皆川剛)
「福島第一原発事故から六年半たっても状況はむしろ悪化している。特に自主避難者にとって住宅の無償提供は命網だったが、今年三月に打ち切られたことで父親が福島に残り、母子だけで避難しているケースなどは生活が成り立たなくなっている。勧告では、こうした現状を世界に理解してもらえた」
今回の勧告に先立ち、先月十二日、スイス・ジュネープで行われた国連人権理事会の普遍的定期的審査(UPR)作業部会の事前セッション。ここで被災者代表として発言した福島県から自主避難中の母親は、このように振り返る。母親には震災当時小学二年の息子がおり、「原発いじめ」などを懸念して、匿名で本紙の取材に応じた。
勧告は、ポ ルトガル、オーストリア、ドイツ、メキシコの四カ国からなされた。「震災時子どもだった人への定期的健康検査や、自主避難者への住宅、経済その他の生活支援の継続を」(オーストリア)、「放射線の許容線量を年間一ミリシーベルトの限度に戻し、避難者と居住者に対する継続的な支援を提供すること」(ドイツ)など、健康被害への懸念と住宅支援の継続を求めるものが目立つ。
事前セッションで、母親は「『原子力緊急事態宣言』は解除されていないが、それでも政府は原発から五キロしか離れていない地域にさえ、子どもとともに避難者へ帰還の圧力をかけている」「病気、貧困、自殺、 離婚、いじめ、地域社会の崩壊。 こうした問題が被災者の自己責任として扱われている」などと訴えていた。 勧告は、この訴えを受け入れ、帰還圧力を高める日本政府を批判した格好だ。
実は日本政府が原発事故をめぐり、国連人権理事会から是正を求められるのは、今回が初めてではない。2013年、同理事会の特別報告者として現地調査を行ったインド出身の弁護士アナンド・グローバー氏が、手厳しく日本政府の対応を批判した。 ・
グローバー報告は、事故直後、緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)の情報提供が遅れたことで、甲状腺被ばくを防ぐ安定ヨウ素剤が適切に配布されなかったことを問題視。そのうえで、▽避難基準を年間被ばく線量一ミリシーベルト未満に抑える▽1ミリシーベルト以上の地域の全ての住民に健康調査を行う▽特に子どもは甲状腺がん以外の病気を視野に血液や尿の検査を含めた全ての健康調査を行うことなどを求めていた。
しかし、日本政府はこの報告に「(グローバー氏)個人の独自の考え方を反映しており、科学や法律の観点から事実誤認がある」と猛反論。報告で求められた内容は「実施済み」などとした。今回の勧告も同様の対応となる 可能性が高い。
自主避難者 の母親を支援した国際NGOグリーンピース・ジャパンのケンドラ・ウルリッチさんは 「日本政府 は今回のUPRで、『女性や子どもの権利が保護されているか』と複数国から質問されたが、きちんと回答しておらず、人権意識そのものが希薄と言わざるを得ない。政府はまず人権に関する国内法や条約を守るべきだ」と強調した。
"人権意識 危うい日本 国連人権理が218項目の勧告 4年前にも類似の指摘 政府は猛反発" へのコメントを書く