新型コロナが問う 日本と世界  「公共の企業化」に警鐘


歴代自民党政権の新自由主義にもとづく市場原理至上主義を告発しつづけてきた内橋克人さん(経済評論家)に、新型コロナウイルスの感染拡大が投げかけた社会のあり方について聞きました。
聞き手 伊藤 紀夫
写 真 野間 あきら

2020-05-06-内橋克人さん.jpg


新型コロナの感染拡大は、現在の社会的矛盾を浮き彫りにし、次の社会はどうあるべきかを問いかけています。

激減した保健所

新型コロナ問題は、自民党政権が長きにわたって「改革」の名ですすめてきた「公共の企業化」に強烈な警鐘を鳴らす災禍そのものです。

たとえば「保健所」は、1990年代には850カ所以上あったものが、いまは472カ所(2019年)に激減しています。今回のコロナ災禍でも、感染対策の水際を担っている保健所が苦境に立たされ、PCR検査さえ思うままに進まない原因の一つになっています。

市場原理至上主義にもとづく「公共の企業化」によって、公共のインフラが利益追求の対象になり、競争原理のもとに組み敷かれてきた結果です。小泉純一郎首相が推進した「構造改革」こそ、その象徴です。安倍晋三内閣は小泉路線を踏襲し、医療・社会保障の枠組みを無残なまでに萎縮させてしまいました。

この「公共の企業化」を見直し、ストップをかけなければなりません。ドイツで新型コロナ感染者の死亡率が低いのは、「公共の企業化」に歯止めをかけ、医療体制をそれなりに守ってきたからだと思います。一方、新自由主義にもとづく公的投資の削減で医療体制を極限まで圧縮してきたイタリアやスペインでは、多数の感染者、死者をだし、医療崩壊を引き起こしました。

惨事便乗許さぬ

ここで注意すべきは、安倍政権が日本経済の悪化をすべてコロナ禍のせいに収斂させて、国民を欺こうとしていることです。

安倍政権はコロナ禍の直前まで、「月例経済報告」で「景気は緩やかに回復している」とウソを吐きつづけてきました。しかし、日本銀行が国債を引き受け、マイナス金利で資金をジャブジャブにする極端な金融緩和にひた走る「アベノミクス」(安倍政権の経済政策)は、消費税10%への増税を強行する以前から、すでに破綻し、深刻な危機的状況に陥っていたのです。

そこへ新型コロナの感染拡大が追い打ちをかけた― これが事の真相です。

まさに「惨事便乗型資本主義」(ナオミ・クライン『ショック・ドクトリン』) そのものではないでしょうか。新型コロナ問題に便乗して、自らの責任を他にスリ替える安倍政権の ″国民だまし″の手法を鋭く見抜くことが大切です。

新型 コロナ後の次の社会像は何か―。何よりも利益追求第一の「生産条件優位」社会から「生存条件優位一社 会への社会転換です。         

私が力を込めて主張してきた「FEC(食料、エネルギー、ケア)自給圏」を本当の意味で社会の基礎にすえる ことです。

新型コロナ問題で世界経済が悪化し、今後、各国の食料の輸出規制が強まれば、食料自給率が37%と低く、食料やエネルギーをアメリカなど海外に全面依存する日本経済は、窮地に立たされるでしょう。危機は迫っていま す。何よりもケア(医療・介護・社会保障)を疎かにしてきた社会は、コロナ危機に対応できない。日々、私たちの目の前で実証されているところです。

コロナ禍を通して、「共」まで企業化する市場原理至上主義の破たんが、誰の目にも見えやすくなるなか、これに代わる「次の社会への選択」がいまこそ私たちに迫られているのだと思います。

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