危機の経済 識者は語る 東京工科大学名誉教授 工藤 昌宏さん (下) 国民生活、窮地に
国民生活 窮地に
新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)は、消費、雇用、所得を一 気に奪い、国民生活を窮地に追 い込んでいます。しかし、全てを新型コロナのせいにするわけにはいきません。国民生活の困窮化は、新型コロナのまん延以前に低所得者層を中心にあらゆる層に及んでいるからです。
例を挙げればきりがありません。例えば待機児童や子どもの貧困問題。高い教育費。低賃金や不安定雇用。重い税負担や、毎年引き上げられている介護保険料などの社会保険料負担。高い公共料金や各種保険料負担。生活保護費の引き下げや年金給付額の目減り。障害者施設問題や介護施設の不足。そして国民全体が抱いている将来不安など。安倍内閣は、これらの最優先で対応しなければならない問題を放置し、さらに問題を深刻化させてしまいました。
他方、国家予算は毎年、過去最高を更新しています。しかし、中身は国民生活向けというより、大型公共事業を中心にしたバラマキで、権力維持のための税金配分の趣を呈しています。
矛盾した政策
裏返せば、バラマキ財政の付けを、国民に押し付けていることになります。しかし、このような国民への負担の押し付けが、消費を停滞させ、経済を停滞させ、さらに低賃金を誘導するという負の循環をつくり出しています。つまり、安倍晋三内閣は好循環をつくり出すといいながら、逆にそれを破壊しているということになります。このような矛盾した政策の背景には安倍内閣のゆがんだ政治姿勢が横たわっています。

安倍内閣は当初、「経済成長なくして経済再建、財政再建なし」として、実質国内総生産(GDP)成長率2%達
成を目標に掲げました。しかし現実は目標に遠く及びません。すると次に「規模」に目標をすり替えました。2015年9月、突如として「希望を生み出す強い経済」を掲げ、名目GDPを600兆円にすると言い出しました。
経済実態偽装
規模ということになると操 作が容易になります。財政支出の他、16年末にはGDPに新たに研究開発費を加えGDPを30兆円もかさ上げしました。600兆円のためには、為政者であることを忘れて経済実態を偽装しようというわけです。前代未間というほかはありません。
しかし、努力も空しく現実はまたもや目標に及びません。当然です。経済実態を偽装するということは、自ら経 済政策の失敗を認めるだけでなく、肝心の国民生活に背を向けていることを意味します。そして、このような国民無視の政治姿勢が、的外れで誤った経済政策を引き出しているわけです。またその結果、安倍内閣は自ら掲げた「強い経済」、「経済成長」、「財政再建」という看板を降ろさざるを得なくなりました。
いま、日本国民はアベノミクスが引き起こした諸問題に加え、新たにコロナ・ショックという打撃に苦しんでいます。安倍内閣は経済政策を総動員して対応しようとしていますが、力不足の上、コロナ対策では対応に手間取り、揚げ旬の果てに自らまいたさまざまな疑惑への対応に追われる始末です。
安倍内閣に求められるのは、まずは国民生活に正面から向き合ったうえでコロナ対策を請じること、また同時に 自ら引き起こしたさまざまな疑惑に真摯(しんし)に対応することです。疑惑をうやむやにしてはならないということです。経済停滞は、為政者への不信、それによる政治不信と無関係ではないからです。
(この項おわり)
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